Ambivalent and Vague

This page is the only Fan Fic.

  • 2017_10
  • <<
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • 6
  • 7
  • 8
  • 9
  • 10
  • 11
  • 12
  • 13
  • 14
  • 15
  • 16
  • 17
  • 18
  • 19
  • 20
  • 21
  • 22
  • 23
  • 24
  • 25
  • 26
  • 27
  • 28
  • 29
  • 30
  • >>
  • 2017_12

曼珠沙華の招き

赤に紛れた、白
話中、依頼の結末を明言しておりません。
該当の詩をお読みになって、ご想像くだされば。


 
 依頼からの帰り道、名所だからと案内された場所がある。そこ広がっていたのは、彼岸花。今回の依頼で鍵となった花だ。

DSC_0424 のコピー
 
 まだ明るいというのに、奥は鬱蒼とした緑が続いている。主張するように立つ、彼岸花の赤が目に痛い。
 写真撮影のスポットでもあるのだろう。大きなレンズのカメラを構えた老若男女があちこちにいた。「きれーい」「すごーい」と言いながら、はしゃいでいるグループも多い。観光名所なのだから、当然の光景だ。
 その中を撩と香、二人は黙ったままで群生地を歩いていた。





 依頼を遂行して万事解決。
 世の中そうはいかないことを、いくらなんでも香だって気付いている。目に見える歪みが実は、奥底に眠る根深い闇を隠すためにあるとしたら。その歪みはそのままにしておいた方がいいのかもしれない。
 今回の依頼もそうだ。少しぐらいの歪みなら、そのままにしておけばよかったのだ。婚約者である彼女の言動がおかしい。聞いても答えてくれない。苦しんでいる姿をどうにかしてやりたい。だから協力してほしい。久し振りの依頼であること、香が依頼主に共感したこと。そうでなければ、こんな依頼は蹴っていたところだ。
 秋になると、その女性は決まった場所に手折った彼岸花をばらまく。世の中の流れからすれば、彼女の行動などたいしたことではない。ただでさえ彼岸花が群生するそこに毎年手向ける、その意味は重要ではないのだ。彼女が過去、そこで何をしたかなど、今となっては。


 暴いたところで、誰も何も救われなかった。





 二人は随分と歩いてきた。それでも、緑と赤の光景は変わらない。彼岸花は二人を誘うように、風に靡いている。

DSC_0439 のコピー

「毎年一本ずつね、増えていったんだって」
 香が苦しそうに、しかし言わずにはいられないと、ぽつり吐き出す。それに比べて、歩みは淡々としている。全てを苦しさに任せてしまったら、それこそ抜け出せない。最後の砦は行動だ。気持ちがどうであれ、歩くことはできる。
 香が言うとおり、彼女が手向ける花は毎年、一本ずつ増えていった。一年にひとつ、増えるもの。彼岸花をさらにばらまいてまで、彼女が守り隠したかったもの。
「あたしは経験ないけど…。でもやっぱり、苦しい。思い出すの、あの詩を…」
 彼女がよく口ずさんでいた白秋の詩が、今も香の脳裏にこびりついている。赤い花を見れば、嫌でも思い出す。
 自分の中心で命を生み出すなど、香にとって想像でしかない。それでも、命が生まれ消えゆくことについて、香は敏感だ。特に消えることについて、恐れを拭い去ることができない。愛する存在は永遠ではない、それを香は実感している。二人がいる世界は、そんな生やさしいものではない。むしろ、血なまぐさい。
 命に強さがあるとしても、今回はその儚さや危うさばかりが目についた。
 撩だって同じだった。香を守りきる自信が揺らぎ、手元に置くことが怖くなる。だから言葉を探せず、黙っているばかりだ。想いのない、上澄みの言葉を伝えたところで、何もならない。ただ香の手を取って、ゆっくりと進むしかない。逃げれば逆に儚さや危うさが強まり、むしろ追いかけてくるのだ。


 彼岸花は二人を誘う。その赤を手に変えて、血まみれの手で。
 引き摺り込まれないよう、撩は香の手をしっかり握って歩く。せめてそれだけは。
 

 いくら撩でも、今この場所は居心地が悪い。苦し紛れに遠くを見やれば、撩はそこに何かを見つけ出した。
「香、行くぞ!」
 撩が香の手首を引き寄せ、早足になる。急なことに香はついていけず、前のめりになってしまった。香を受け止めつつも、撩は急ぐことを止めない。立ち止まったときも同じだ。
「ど、どうしたのよ」
「ほれ、これを見ろよ」
「これ…」

DSC_0451 のコピー

 握っている方とは反対の手で撩が指差したのは、やはり彼岸花。しかし、それは白かった。雪崩れ込むように押し寄せる赤に一本、その白さを守っている。
「白い花もあるのね」
「これまで、赤しか見てこなかったからな」
 永遠に続くと思われた赤に紛れた、白。それは二人を安心させた。血まみれた誘いの中にいても、白い手はすっと伸びている。染まらない力強さを示しながら、真っ直ぐに空へと。
 白い例外を見つければ、赤は永遠ではなくなる。今の二人にとっては、それだけで良かった。儚さや危うさを超えて、命は二人の中で力強さを取り戻す。


 香の中であの詩が薄れ、気にならなくなる。撩もまた、守り切る自分を取り戻す。前を見据えたまま、撩は何かを確かめるように呟いた。
「守るから、必ず」
 突然の言葉に、香は首をかしげる。伝わらなかったことに、さすがの撩も苦笑いだ。いい加減気付けよと、撩は握っていた手に力を込めた。







Special Thanx and dedicate this story to Purin.

スポンサーサイト
  1. [ edit ]
  2. Short Story

プロフィール

うーたん

Author:うーたん
好き勝手に書き散らかしておりまする。書いたお話は、まるで千歳飴(どこ切っても同じ)。タニシのようにひっそりと生息中。

最新コメント

最新トラックバック

« 2017 11  »
SUN MON TUE WED THU FRI SAT
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 - -

検索フォーム

The antenna is here.

QRコード

QR

ブロとも申請フォーム


pagetop