Ambivalent and Vague

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あなたに似た声 1

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今はもう声が遠くて

 
 伝言板に書かれたXYZの文字。つまりそれは、シティーハンターへの依頼があることを意味する。
「ひ、久し振りの依頼だわぁ。何日ぶりかしら!」
 チョークで書かれたその文字を見るだけで、香の心は踊った。
「さてさて、さっそく依頼人にコンタクトを取らないとね」
 手帳に写すペンも軽やかに、今回はどんな依頼人なのだろう、と色々思い描いていた。





「断るっ!」
 アパートのリビングで、撩はそう断言した。
 依頼人の性別がどうであれ、香が何かしら頭を悩ますことには変わりがない。女性ならば夜這い防止、男性ならば労働担当の同意獲得だ。


 そして、今回の依頼人は男性だった。


「ちょっと。久々の依頼なんだから、男からのだって受けてよ! 明日の約束、撩も来てよね」
 念を押すようにシャツを掴んで迫る香に対し、撩は顔すら合わせようとしない。
「野郎の依頼なんて受ける気ないない。俺は美女以外の依頼は受けない主義なの〜」
「あんたって人は、いつもそんなことを言って。このまま依頼がなければ、生活が大変になるのよ」
 いつもの反応だと思いながらも、香だって後に退くことはできなかった。どんなに生活費を切り詰めようと頑張っても、もちろん限度はあるものだ。ギリギリの家計でハラハラしたまま生活を送りたくはない。特に労働担当である撩にはしっかりと食事を摂ってもらいたいし、そのためには先立つものが必要になる。しかし、いつも撩にはその点をかわされ、香の心は苦しくなっていた。


 少しだけ言葉に詰まった香をいいことに、撩はさっさと扉を開けて出て行こうとしていた。
「ま、そんなに言うんだったら、おまえが受けたら? 男と知り合う、いい機会かもよ〜」
 香にとっては、どんな依頼だって、まずは真摯に受け止めたい。撩だって同じだと思うのに、そんな軽薄に返されてしまっては、掛ける言葉に迷ってしまう。いや、撩の返事が怖くなるのだ。そして、自分は何のためにここにいるのかと寂しくなる。


 自分の言葉をまともには扱ってくれない。そればかりか、彼の言葉はまるで氷の刃のようで、香の心を少しずつ傷付け消耗させていく。今のやりとりだっていつものことなのに、香はうまく笑えなかった。
 あんなに好きだった声が、今は遠い。





 扉を閉めた撩は、廊下で俯いたまま動かない。
 脳裏の香は悲しそうな目をして、もう笑ってはくれなかった。





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Special Thanx to Pound

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好き勝手に書き散らかしておりまする。書いたお話は、まるで千歳飴(どこ切っても同じ)。タニシのようにひっそりと生息中。

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