Ambivalent and Vague

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Through whatever, come what may...

あなた

 
 男が指定された場所へ辿り着く。とある町の中心から離れたところにある、プレハブ造りの二階建てだ。周りには何もなく、ここで何があったとしても、すぐに発覚することはないであろう。そんな秘境のような場所だった。
 扉を開けると、中には依頼人の他に数人の男たちがいた。部屋の中心に置かれたテーブルを囲むように配置されたソファに、体を少し強ばらせながら座る男、足を開き上半身を背もたれに預けた横柄な男など、様子はそれぞれだった。
 依頼を引き受けたときから、男にとってこの状況自体は想定内であったが、この男たちと同列に依頼されたと思うと、随分と見くびられたものだと視線が厳しくなった。その様子を見て、依頼人は少しうろたえて言い訳を重ねるも、そんなことはどうでもよかった。
 確かに自分の方が腕も経験も上であろうが、だからといって自分がリーダーシップを取ろうとも思わない。依頼を遂行することが必要だから、と撩はすぐに切りかえた。





寝る時間の空間はどこまでも暗くて、
でも眠ることなんてできなくて。
ただ、手を組んで祈ってしまう。





「あんた、シティーハンターなんだってな」
 言葉をかけてきたのは、あの時、横柄な態度で座っていた男だ。
「事前に依頼人が口を割ったからね、調べさせてもらったよ。あんた、いっつもこんな姿して、もう腕はなまっちまってるんじゃねぇの?」
 そう言って突き出したのは、一枚の写真だ。だらしない顔をしながら、街中でナンパに勤しむ撩の姿。確かに、その姿からは裏世界ナンバーワンだと想像ができない。
「依頼人の手前、協力はするけどさ。でも、気をつけるこったな。俺はいつでも、あんたの首なんて獲れるんだぜ」
 へっへと笑う姿は、どこか醜い。そして、粋がっているばかりで、実力などどこにも感じられなかった。それぞれ同じく依頼を受けているから協力しているものの、同時に牽制し合っている。だから、チームプレイなど望むことなどできないし、撩もそのつもりはなかった。





神様なんて信じない、
彼はそんな人だけれど。
それでも、神様に祈ることしか。





 下準備のため、男たちは何人かに分かれて現場に侵入していた。港近くにある倉庫には人がまばらで、これなら準備もたやすい。まず遠くから倉庫の様子を見ていた男たちは、多くがその意見だった。
 ただ、撩を除いては。
「これくらい、俺様の手にかかれば、ちょろいもんだぜ」
 準備を終えた男たちがそのまま帰ろうとすると、足元でカチッと音がした。
「なんだぁ?」
 言い終わる前に、倉庫内には警報が鳴り響く。同時にいくつもの照明が男たちを強い光で照らし、男たちはそこから動けなくなった。
「く、くそっ」
「光が強すぎて、周りがわからん」
 急展開すぎて、どうしたらいいのかがわからない。切り抜けようにも、妙案がすぐに浮かぶはずもない。
「どうすればいいってんだ!」
 一人が半ば自棄になって叫ぶと、その瞬間に銃声が鳴り響き、照明から強い光が消えた。目が次第に暗闇へと慣れると、男達は足早にその場を立ち去り、倉庫から遠く離れた。
「一体、どうなっているんだ。うまくいっていたのに!」
 倉庫内で叫んでいた男がまた声を荒げると、どこかから静かな声が聞こえた。
「人が少ないからといって、何もないと思わないことだ」
 暗闇から静かに人の形が浮かび上がる。ボウッと灯った光が顔を明らかにすると、そこにいたのは撩だった。全身を黒いスーツに身を包み、明かりから死角となっているこの場所に馴染んでいる。撩は右手の煙草を咥えたまま、無様に逃げてきた男たちをチラリと見やる。

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 おまえこそどこにいたんだ、姿が見えなかったのは、真っ先に逃げたからだろう。そう思った一人が言おうとすると、撩の纏う雰囲気がさらに変わった。その目にはどんな感情もこもっておらず、視界に捕捉された人間は無の世界へ誘われる。自分の殺気も何もかもが吸い込まれ、気づけば底なし沼にはまった人間のように動けない。
 無防備に立ちつくすしかない男たちはやっと、撩が自分たちとは違う存在であるとわかるのだ。きっと、このまま撩が銃を構えて撃ち抜こうとしても、反撃することもできないだろう。自分の命も何もかもが、目の前の男に委ねられた感覚。それをもたらす撩の存在は、絶対だった。
「最後まで気を抜かないことだ。ちょっとした気の緩みを狙ったトラップはどこにでもある。名を上げたければ、これくらい見逃さないことだな」
 その言葉で、男たちはやっと理解した。あの照明を撃ち抜いたのは撩であり、逃げ惑う自分たちとは別に、何もかもを把握して動いていたことを。
 シティーハンターが何者かを実感した男たちは、その背筋を冷たいものが走った。





きっと彼にしかできないこと、
どんなに危険で困難であっても。
無事でいて、そして帰ってきて。





 あの夜以来、男たちは畏怖を持って撩と接するようになった。単に裏世界の頂点だからと上に見るのではない。自分たちの命すらも、この男の手の中にあるとわかったからだ。きっと、依頼の遂行に自分たちが邪魔だと感じれば、撩はためらいなく命を奪うだろう。死神の鎌は、いつでも振り下ろす瞬間を待っている。
 だから、必死になって男たちは考えるようになった。今回の失敗はどんな影響があるのか、それを加味して計画を修正し、依頼を遂行まで持って行く必要があったからだ。そして、その答えを撩は示してくれない。
 倉庫の中にあったのは、これから外国へ売られようとする武器の数々だ。流出すれば、世界中でさまざまなことに使われ、さらなる悲劇を生み出すだろう。だから、それを阻止してほしい。それが今回の依頼だった。
 タイムリミットは、確実に近づいている。準備時の失敗は次の失敗を許さず、一回で確実に武器を奪取するしかない。失敗すれば、確実に自分たちの命に関わる。その慎重な努力が功を奏し、数日後には武器を奪取することに成功した。





肩代わりなんてできないけれど、
ずっと彼と一緒にいたい。
いつもの明日、それだけでいい。





 依頼が終われば、死神と一緒にいる必要はない。数日過ごした場所に戻ると、他の人間は報酬を受け取り、足早に帰って行った。そして最後、撩が依頼人と向かい合った。室内には依頼人と撩の二人だけ、側近の二人は外の車で待機している。今日の側近は裏の人間ではないから、裏との接点をあまり見られたくないという依頼人の考えでもあった。
「今回は、本当に感謝してますよ。他の人間だけでは、きっと今回お願いしたことは成功しなかったはずです。だから、あなたには気持ちばかり乗せてあります」
 開かれたアタッシュケースには、一万円札の束が隙間無く詰められている。今回のような仕事をしていれば、撩にとっては見慣れた光景だ。だから、気持ちばかりと言われても、それで心が動くことはなかった。
 なぜなら、撩が受けた依頼は、ここからが本番だったからだ。
「最初と話が違ったし、俺は子守りのために呼ばれたつもりはないけどな」
 冷たい声で伝えられると、依頼人は体をビクリとさせて頭を振った。
「そ、それは……。冴羽さんの気分を害したということですよね、本当にすみません。ただ、これは一人では難しかったかと……」
「要は、俺は保険だったってことだろう、あいつらの失敗を見越しての」
 他の男たちの断片的な話から、今回の依頼では、撩へと声がかかったのは一番最後だったとわかった。一旦は計画のために人を集めるも、心配になった依頼人が、撩が言うように保険を掛けたのだ。
「わ、わかりました。気持ちをさらに上乗せしますので」
「そんなことはどうでもいい。俺が欲しいのは、別のものだ」
「そ、それは?」
 一体なにを提示されるというのか? 男が身を固くすると、撩は抑揚のない声で言った。
「おまえの命」
 男が撩の言葉を理解するには、時間がなかった。言葉と同時に、向けられた銃口から放たれた弾が確実に男の額を撃ち抜けば、意味を考えることすらできない。立ち上がることも許されず、見開いたままの目は血で隠されていく。
 男が倒れた音と銃声。それを聞きつけて、側近の男たちが部屋に入ってきた。裏の人間ではない男たちが慣れない手つきで銃を構えても、そのことは撩にとって何の意味もない。依頼の遂行に邪魔であれば始末する、撩の思考は極めてシンプルだ。
 アタッシュケースを持って外へ出ると、撩は周囲をぐるりと見回した。こんな場所をわざわざ訪れる人間もいないだろう。しかし、何が起こるかわからない。外に止まっていた車をギリギリ建物に近づけた撩は、遠く離れた場所から車のガソリンタンクを撃ち抜いた。





たくさんのことなんて、
もう望まなくていいから。
あなたのいない世界は、色がない。





 新宿へと戻った撩は、まず開店前のバーに立ち寄った。裏口を合鍵で開けると、そのまま地下へと潜る。暗い廊下の奥にある扉を開けると、そこは撩のための部屋だ。新宿の店にはいくつか同様の部屋があり、このことを香には教えていない。主に裏の仕事のために使うからであり、店側もそのことを重々承知していた。
 いつもの服に着替え、アタッシュケースも置くと、外へ出た撩はまた違う場所へと向かった。次は別の店の個室、そこには既に女性が座って待っていた。
 撩が引き受けた本当の依頼は、この女性からのものだ。
 彼女の父は、武器の奪取を依頼してきた男の秘書でもあった。しかし、武器を扱うという事業には異を唱え、さらに他の組織から武器を奪取しても売りさばこうとする姿勢を見ては、警察に言おうと決意するまでに時間はかからなかった。ただ、そのことにすぐ気づかれてしまい、外出していた彼女以外は殺害されてしまったのだ。きっと、集められた男たちの中に実行犯がいたのだろうと思いつつ、撩にとってはもはやどうでもいいことだった。
 彼女にすれば、家族を殺した男に復讐したい。しかし、自分にそんな力はない。だから、うわさ話だと思っても、新宿駅の伝言板に縋るしかなかったのだ。そして、そのうわさは本当だった。
 とはいえ、撩からすれば、その復讐なんてものには興味もない。ただ、その男が近々莫大な量の武器を奪取して売りさばくために動いている、と教授からの情報でわかっていたし、武器ルートそのものを潰すにはいい機会だった。
「あの、依頼料はこれだけしか用意できなくて……」
 撩に差し出された封筒は厚みがあったが、あのアタッシュケースに敵うはずもない。この金額が少ないのだと理解していた依頼人は、膝の上に置いた手をかすかに震わせながら言った。
「あとは、冴羽さんの言う通りにします。わ、私でも……」
 彼女の様子をじっと見ていた撩は、静かに席を立った。
「依頼料として、これは受け取っておくよ」
「え、でも……」
「いいんだよ、これで」
 特に振り返ることもなく、封筒を手にした撩は個室を立ち去った。封筒を懐に入れて、そのまま店を出ようとすると、ママが声をかける。
「撩ちゃん」
「彼女、よろしくな」
「わかったわ、任せておいて」
 ママが微笑むと、撩もつられて表情を緩ませた。死神としての撩はもういないが、裏世界ナンバーワンの男はここにいる。気さくに声をかけられても、接し方を間違えてはいけないのだ。
「香ちゃんによろしくね!」
 それを聞いた撩は、「あぁ」と微笑んで店を立ち去った。


 撩は、彼女の名前を久し振りに聞いた。
 それだけで、撩の心に何かが満たされていく。
 ここにいるのは、大切な存在にこれから会おうとする、一人の男だ。










 もうすぐ夕方というところで、玄関が開く音がした。
 気づいた香は、一目散にかけていく。
「おかえりなさいっ!」
 色付いた世界の中、香は満面の笑みで撩を出迎えた。







Special Thanx to Pound


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Author:うーたん
好き勝手に書き散らかしておりまする。書いたお話は、まるで千歳飴(どこ切っても同じ)。タニシのようにひっそりと生息してたけど、只今休眠中。

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